不動産特化型オーナーズブック(Ownersbook)の特徴とソーシャルレンディングにおける不動産案件の精査の仕方

まず、オーナーズブックについて解説させて頂く前に、ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)について詳しくない方もいると思うので説明させて頂きます。


ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)とは?>

まず、ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)についてあまり詳しくないという方もいると思うので解説させて頂きます。

ソーシャルレンディングは、クラウドファンディングの一種と言われていて、ネット上で資金の出し手である投資家と資金が必要な事業者をローンという形でつなぐサービスとなります。



ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)へ投資を行うメリット/リターン

実際にソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)を使う投資家、企業(資金の借り手)のメリットをまとめました。このメリットは、あくまで資金がきちんと返済される場合のメリットとなります。

– リターンの特徴
今まで、株式・投資信託・商品先物(金・銀)・不動産等の主要な投資対象は、投資した商品の価格の変動と利回り(配当・分配・賃貸収入等)で投資のリターン・ロスが決まっておりましたが、ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)の場合は、企業から返済が行われる場合には、投資元本(投資時と同じ)+利回り(利子の一部)という形でリターンが決まります。

– 投資家のメリット
 1. 投資リターンとして資金の貸出しにおける利子の一部を受け取る(一部手数料を差し引き)
 2. 資金貸し出しなので投資元本を受け取るができる(返済遅延がない場合)
 3. 担保を設定することが出来る(案件による)

– 企業(資金の借り手)のメリット
 1. 柔軟な資金需要に対応してもらえる
 2. 投資家の需要があれば国外案件も可能
 3. 案件によってはよりスピーディーに借入れが可能


<オーナーズブックについて>

オーナーズブック Ownersbook(少額からの不動産投資クラウドファンディング『OwnersBook』)は、2014年から運営されている不動産特化型のクラウドファンディングサイトとなります。サービスにおける特徴は、主に下記の点となります。

(特徴一覧)
☑案件タイプが2つあり、貸付型とエクイティ型がある。
☑貸付案件は、全案件で不動産担保付き(融資上限のLTV:80%)
☑マザーズに上場している不動産会社が案件を審査・提供
☑案件の期待利回りは、2.5%~7%(3・4・5%が多め)
☑1万円から投資可能


<運営会社>

ロードスターキャピタル株式会社が運営しております。2012年に不動産総合会社として設立され、現在では東証マザーズに上場している企業となります。特に気になったのは、運営メンバーの経歴ですが、ゴールドマン・サックス・リアルティ・ジャパン出身の代表社長や取締役の方や一般財団法人日本不動産研究所出身の取締役の方等の不動産業界においてその分野で秀でている会社で経験を積まれた方が在籍している経営メンバー層の厚さにあると思います。


<クラウドファンディングにおける貸付型とエクイティ型の違いって何?>

オーナーズブックでは、貸付型クラウドファンディングとエクイティ型クラウドファンディングの案件が御座います。そのため貸付型とエクイティ型クラウドファンディングの違いを説明させて頂きます。

貸付型は、当サイトでも説明させて頂いているソーシャルレンディングの枠組みに当てはまります。要するに、資金を貸し出して、受け取った利息が投資家への期待リターンの支払いに充てられます。

例えば、期待リターンが年利5%と記載されていて、事業者が遅延なく元本・利息を支払えば、投資家に貸し出しの期中に年利5%、そして満期に元本が支払われます。

一方で、エクイティ型とは、日本語で言うと株式型となります。ようするに、企業の株式を買うことと同様で、元本は上がることもあれば下がることもあります。そして、利益が余れば配当も分配されます。不動産で言うと、不動産の売却益を受け取ることもできれば、売却損で原本が毀損することもありますが、賃貸収入を配当をという形で受け取ることが出来ます。

例えば、ざっくり説明すると1万円で家を買うときに1000円は、投資家に出資(エクイティ)してもらって、9000円は銀行から年利10%でお金を借りて(貸付)家を買ったとすると、もし1年後に家が2万円で売れたとします。銀行の得られるリターンは、利息の900円(9000円×年利10%)ですが、1000円払った投資家は、1万円から2万円で200%で家が売れたわけなので1000円×2倍(200%)で、2000円受け取れます。

要するに、貸付型クラウドファンディングの良いところは、年利が決まっていて返済される限り元本も毀損せずに戻ってきます。さらに、担保を設定して、元本が返ってこないときは、その家を売って現金化することが出来ます。

一方で、エクイティ型クラウドファンディングは、大きく元本が増えることもあれば、大きく減ることもあります。


<オーナーズブックの案件の分析>

実際にオーナーズブックで募集されている案件を見ていきましょう。まず募集総額は、7億4600万円となっていてこれが、サイトで行う募集額となります。

そして運用タイプが貸付(シニアローン)と記載されていますが、不動産の貸付では、主に返済順位によってシニアローン・メザニンローンに分かれております。下記の通りシニアローンの方が返済の優先順位が高いためより安全性が高いローンとなります。投資利回りというのは一般的に、リスクが上がれば利回りが上がるので、シニアローンの利回りは、メザニンローンに比べて低いです。

(不動産ローンの階層)
☑シニアローン:資金の借り入れの返済における優先順位が最も高い
☑メザニンローン:返済の借り入れの返済における優先順位がシニアローンの次

そして次に予定運用期間ですが、長い方が返済が滞る可能性が高まります。なぜなら、例えばですが1年間に起こることと10年間に起こることでは、1年以内に起こることを予想する方が簡単です。

償還方法の部分で元本については、一括返済と記載されているので31か月後にこのファンドが償還される際に元本が返ってくるということです。しかしファンドの貸付先がより予定より早く不動産を売却した場合には、早期償還として資金の元本がより早く返済される可能性もあります。しかし基本的には、31か月の間は、予定利回りが分配されるという形になります。


(募集概要:オーナーズブックのHPより)
東京都大田区西蒲田に所在するオフィス1棟(本物件)を担保とする「シニアローン」への投資となります。本物件を取得する総合不動産会社(本借入人)に74,600万円(7億4,600万円)の貸付を行います。




<不動産担保は、わかるけどLTVってなに?>

LTVは、Loan to valueのことを指しますが、要するに不動産の評価額に対する借入金の割合のことです。融資条件の上限は、LTV80%というのは、不動産評価額の80%までしか貸し出さないですよということです。

オーナーズブック(Ownersbook)では、貸出案件で全て担保を設定しているとサイトに記載されていましたが、もし担保が一番抵当権で設定している場合は、借入金の割合がより少なく(LTVが低い)ほど、担保を現金化した場合の、貸出金の返済率が高まります。

<不動産の担保評価を見る上で重要な点>

ソーシャルレンディングサイトでよく担保付と記載が御座いますが、気を付けるべきは、下記の点となります。当たり前ですが、担保の借りが低いと現金化した時に帰ってくるお金がより少なくなります。

そして二番抵当権の場合は、担保を現金化した場合に、まず一番抵当権を設定している人に、もし二番抵当権の場合は、より受け取れるお金が少なくなるため、リスクヘッジとしての担保の有効性が大きく下がります。最後に、LTVの割合が高い場合には、その分不動産購入おける借入金の割合が高くなることで、貸し手にとってよりリスクの高い貸付案件となります(担保でカバーできる以上の資金を貸し出す必要がある可能性が高くなるため)。

(担保評価で重要な点)
・担保の価値
・一番抵当権かどうか
・LTVの割合


リーマンショックは、不動産業界において特に大きなイベントであったこともあり、多くの大手と言われた運用会社が吸収されたり、事業停止に直面したりもしており、コロナ危機下の現在でも、不動産リート大手のケネディクスが大手企業に吸収されたりと波が激しい業界であります。生き残ってビジネスを続けることが特に大変な業界だなぁと思う一方で、業界の新陳代謝が上がればその分、新たなサービスが誕生するという面もありますね。


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