ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)への投資と業界の変遷(過去10年)

この記事の作成にあたって、現在は、直接的に携わっておりませんが、私は2013年からソーシャルレンディング業界に携わっておりました。そのためソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)への投資家ではなく、事業者側の視点からソーシャルレンディング業界の変遷(振り返り)について書いていきます。


ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)とは?>
まず、ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)についてあまり詳しくないという方もいると思うので解説させて頂きます。

ソーシャルレンディングは、クラウドファンディングの一種と言われていて、ネット上で資金の出し手である投資家と資金が必要な事業者をローンという形でつなぐサービスとなります。( maneoのサイトにわかりやすい説明があったので参考としてリンクを張っておきます。Click⇒maneoにしくみ )


ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)へ投資を行うメリット/リターン
実際にソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)を使う投資家、企業(資金の借り手)のメリットをまとめました。このメリットは、あくまで資金がきちんと返済される場合のメリットとなります。

– リターンの特徴
今まで、株式・投資信託・商品先物(金・銀)・不動産等の主要な投資対象は、投資した商品の価格の変動と利回り(配当・分配・賃貸収入等)で投資のリターン・ロスが決まっておりましたが、ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)の場合は、企業から返済が行われる場合には、投資元本(投資時と同じ)+利回り(利子の一部)という形でリターンが決まります。

 – 投資家のメリット
 1. 投資リターンとして資金の貸出しにおける利子の一部を受け取る(一部手数料を差し引き)
 2. 資金貸し出しなので投資元本を受け取るができる(返済遅延がない場合)
 3. 担保を設定することが出来る(案件による)

 - 企業(資金の借り手)のメリット
 1. 柔軟な資金需要に対応してもらえる
 2. 投資家の需要があれば国外案件も可能
 3. 案件によってはよりスピーディーに借入れが可能


<資金の貸し先である企業が資金を返済できない場合
投資家のリターン/メリットをまとめてきましたが、そもそも資金を借りている企業が返済できなかった場合は、どうなるのかという点が気になった方も多いと思います。

– 担保設定がない場合
担保が設定されなかった場合は、企業がその事業をうまく回して返済してくれるのをひたすら待つしかありません。

担保が設定されている場合には、担保が返済原資として現金化(不動産であれば売却等)して資金が返済されます(担保で100%返済されるとは限らない)。そのため、企業が資金返済されるか不安という方は、担保設定されているかどうかを確認すべきです。

クラウドバンクでは、下記のように融資元本回収率が記載されております。将来の元本回収率を保証するものではないと記載されておりますが、2020年11月末では融資元本回収率が100%となっております。一方で、maneoにおいては、返済実績として事業性ローンデフォルト発生金額の推移がHPに記載されております。(詳細:maneo返済実績一覧)。

クラウドバンクのHPより抜粋)


– 担保の価値について
しかし、担保が設定されていたとしても担保に価値がない場合は、返済原資に繋がらないため意味がありません。そのため、担保設定されている不動産案件で確認すべき重要な点を下記のようにまとめました。ソーシャルレンディング事業者のサイトで確認する際に参考にして下さい。

例えば、不動産購入(1000万円の不動産)で購入金額の10%(100万円)を借り入れで行う場合に、担保設定されていて担保価値の評価額が、300万円の場合は、担保を売れば評価額の半分であっても余裕をもって借入金額を支払うことが出来ます。一方で、購入金額の100%を借り入れしていた場合は、担保を売っても借入額の返済において、資金が足りません。

– 担保の抵当権における順位
さらに、担保には順位があります。第一抵当権、第二抵当権..と設定があり、第一位の人が最初に担保を現金化した場合に、返済してもらえます。しかし、第二の方は、第一の方に返済した後で残った分を受け取る形になるので、担保価値がいくら高くても第二抵当権として担保において設定していた場合は、貸し付けた金額にもよりますが、返済額の見込みが下がります。

– 不動産担保の評価
最後に、不動産の評価額ですが、ある程度の参考にはなりますが、これはいくらで売れるかという金額ではなく、あくまで評価額です。市況や需給バランスによって実際に担保の不動産を売却する場合には、不動産の価格が不動産評価額からはなれることは、あり得る話です。

 – 担保を確認するうえで重要な点
 1. 企業は、不動産購入にあたって何%借り入れで賄っているのか
 2. 抵当権は、第一位で設定されているかどうか
 3. 不動産の評価額

(不動産担保案件に投資が行えるソーシャルレンディングサービス例)
1) クラウドバンク
2) ファンズ(Funds)
3) SBIソーシャルレンディング
4) CRE Funding provided by Fuel
5) maneo


ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)って投資対象としてどうなのか?

投資信託への投資
株式・債券に投資する投資信託に投資をした場合に、株式配当・債券の利回りが期待出来たとしても、もし投資信託の基準価額が下がった場合は、配当・利回りを受け取った場合にも、最終的なリターンがマイナスになる場合があります。

– 不動産への投資
不動産に投資する場合にも、賃貸収入で収入を得られたとしても、不動産価格が下がった場合は、投資リターンが最終的にマイナスになる場合があります。一方で、ソーシャルレンディングの場合は、資金の貸出しにおける利息が利回りとなるため、企業が返済する限りは、元本は変動がなく、利回り(利子の一部)を受け取ることが出来ます(企業が資金返済を遅延なく行うことが重要となります)。

ソーシャルレンディングの特徴
同様に資金の貸出しという形で、投資リターンとして利回りが見込める債券が投資資産として挙げられると思いますが、一般的に債券投資における最小単位の金額が高いため、一般的な個人投資家にとっては、ハードルが高い資産であると思います。ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)では、一万円から投資を行えるサービスも多いため、入り口のハードルは低いと思います。

(少額から投資が行えるソーシャルレンディングサービス例)
1) クラウドバンク
2) ファンズ(Funds)
3) SBIソーシャルレンディング
4) CRE Funding provided by Fuel
5) maneo

(ファンズ(Funds)のサイトから抜粋)

– 資産運用における分散投資
投資においては、様々なリスクがあり、市況は日々変動します。そのため、リスクを分散させるために幅広い資産に分散投資をする運用手法がよく紹介されております。その中で、投資資産、投資対象国、リターンの相関性(どれくらい同じ動きをするのか)等の考える要素がありますが、ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)は、少額で貸付債権に出資可能という点で、投資対象・収益・リスクを分散させることに繋がる可能性もあります。


ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)への投資で気を付けるべきポイント>
投資を行う際に、どのような資産であってもリターンに対するリスクが付き物です。そしてソーシャルレンディングでは、下記のようなリスクが存在します。

(投資におけるリスク)
1. 貸出先の事業者の返済遅延リスク
2. ソーシャルレンディング事業者の倒産リスク
3. 為替リスク(海外投資案件の場合)
4. 資金回収リスク

1. 貸出先の事業者の返済遅延リスク
事業者の返済遅延が起こる理由としては、主な理由としては、計画通りとして事業が運営されていないことが挙げられると思います。

例えば、ある不動産を100万円で仕入れて120万円で売る予定であったけれども実際は、120万円で買い手がつかなかったり、賃貸収入が不動産価額に対して年利5%を想定したけれども入居者が入らず、賃料収入が年利2%だった等が挙げられると思います。

そのまま返済が滞った場合に、担保が設定されている場合は、担保が行使され返済原資になる場合もあります。新規事業への融資で、収益が想定より大幅に少なく、担保がない場合は、返済が一切見込めない場合も起こりうると思います。担保についての説明は、わかりやすくまとまっているクラウドバンクの記事があったので参考に共有させて頂きます(Click⇒ソーシャルレンディングで知っておくべき「担保」とは)。

(クラウドバンクのサイトより抜粋)

2. ソーシャルレンディング事業者の倒産リスク
ソーシャルレンディング事業は、金融事業であることから高い事業運営費用が必要となります。第二種金融商品取引業の届け出や貸金業への登録が必要となり、高度な金融事業を営むことが出来る経験者が必要になります。

さらにシステムの運営においても、利払いであったり、顧客の資金管理、オペレーション費用等の高いコストが事業運営において必要不可欠となります。そのため、事業拡大・社内整備のため各社資金調達を行いながら事業を運営しております。

最悪のケースとして、運営コストが支払えず、事業拡大が見込めない場合は、事業撤退も事業ですので起こりえますが、そのケースでは、顧客の資金分別管理等が重要になってくると思います。

3. 為替リスク(海外投資案件の場合)
為替リスクについては、貸出先企業が海外に所在地がある場合、貸出する通貨価値が対円で下落した場合には、現地通貨(投資先の通貨)で計画通りの返済があった場合にも、通貨安の影響によって、投資先通貨から円に両替を行った場合に、実際に受け取る金額が想定していた元金・利回りが下がる可能性があります。

4. 資金回収リスク
リスク1でも説明させて頂いたように、貸出先の企業において計画通りに事業が進まない場合に、返済の遅延が起こる場合があります。その場合に、担保が設定されている場合には、売却等の手段で担保を現金化して返済という流れになると思います(しかし、担保の価値によって100%投資額が戻ってくるとは限らない)が、担保が設定されていない場合は、返済原資が事業次第(一切の返済が見込めない場合もあり)となる場合があります。

ソーシャルレンディングの変遷>
本題になりますが、ざっくりとここ10年くらいの歴史をざっくりまとめます(ご指摘御座いましたら修正します)。詳しい内容は、各事業者説明とともに別記事にまとめます。

(業界の変遷)
1. 事業者向け・個人間貸付けの登場(maneoAQUSH)
2. 不動産事業・事業運営向け貸し付けが主流に(クラウドバンクSBI social lending)
3. 太陽光案件、マイクロファイナンス新興国における事業者向け等商品がより多様に(クラウドクレジット)
4. 大手企業との共同案件数が増加(ファンズ(Funds)CRE Funding provided by Fuel)

アメリカでは、個人間貸付が日本での不動産案件のように貸付型クラウドファンディングにおいて主要サービスとなっております。その中でもレンディングクラブは、主要企業の一社となっており今年は、現地の銀行を買収したとしてニュースになっておりました(ニュース:米フィンテック企業が銀行買収 融資仲介のレンディングクラブ:時事ドットコム (jiji.com))。

私の推測ですが、日本ではアメリカのように個人の信用スコアが普及しておらず、個人の審査プロセスに労力がかかりカードローン等の小口ローンが普及している日本では、ソーシャルレンディングを利用して資金を借り入れる必要がないこと、返済状況の管理の難しさにあると思います。

日本では、ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)のプラットフォームをベースに、いつの間にか提供サービスの幅が広がっており、大企業とのコラボ案件等、業界への信頼が高まっていることを感じます。今後、ソーシャルレンディングの事業をメイン事業として上場するような企業が増えていけばより業界の発展に貢献していくのではないかと思います。

以前は、AQUSHという会社が下記のようなサービスを提供していたようです。ソーシャルレンディング業界も試行錯誤の上で発展を遂げているというのがわかりますね(Click⇒AQUSHローンマーケット)。


(AQUSHのサイトから抜粋、現在は募集されていないようです。)

*あくまで筆者の個人的な感想(つぶやき)であり、情報の正確性は一切保証されておりません。投資は自己判断が必須となるため、正確な情報ソースをベースにソーシャルレンディング事業者のサイトにおいて記載されているリスクを認識し、ご判断をお願い致します。一切の投資勧誘等を目的としておりません。